コロナ禍になってから、村上春樹さんの本を何冊か読んでいる。
昨年末に呼んだのが『海辺のカフカ』。
15歳の主人公・田村カフカとパラレルワールドで描かれているのが、ナカタさんという60歳の男性。
ナカタさんは戦争中のとある事件(事象?)により、記憶が失われ、いまは生活保護を受けながら生きている。
数十年間、平和に生きてきたナカタさんが、なぜかカフカの人生に巻きこまれ、中野区のアパートから四国まで旅をすることになる。
そのナカタさんがいつも飲んでいるのがほうじ茶。
15歳のカフカはいつもコーヒーを飲んでいて、60歳のナカタさんはほうじ茶。
野心(?)満々で四国に来たカフカと、何かに導かれて四国に流れ着いたナカタさん。
その対比がおもしろいなと思って読み進めていた。
ナカタさんは、旅の途中でも手持ちの水筒に食堂で温かいほうじ茶を入れてもらったりしている。
世間的にいうとナカタさんは「弱者」の部類に入るのだろうけれど、自分が弱いと認めていて、助けてほしいときは他人に頼って生きていってもいいという気がしてくる。
ある意味、彼は打たれ強く、したたかで強靭だといえる。
そのナカタさんに惹かれて、というわけではないけれど、
私もこの一か月ほどコーヒーを止めて、ほうじ茶を飲むようになった。
歯科矯正の器具の間の着色汚れを気にして、というのが一番の理由。
濃い目に入れて、ミルクを足してほうじ茶ラテにして飲んでいるので、果たしてそれで着色汚れに効果があるのかは不明だし、一日数杯飲んでいるので、カフェインの摂取量が抑えられているかも不明だ。
ただ、自分の人生が、人生の上り坂に挑んでいるカフカではなく、人生の下り坂、もしくは終わりを意識しているナカタさんのほうに近いと思って読んでいたのは確か。
ナカタさんは四国で、自分の使命を果たすために動いていく。
ホシノちゃんという相棒を見つけて。
もしかしたら、ホシノちゃんの目線でナカタさんを見ていたのかもしれない。
コーヒーとほうじ茶。
コーヒー側のカフカも、行動している。
15歳なりに考え、出会った人たちの助けを得ながら、生きている。
飲み物や年齢は違えど、みんな一生懸命生きている。
またしてもオチのない感想だけど。
村上作品を抵抗なく、夢中になって読めるようになったので、私もそろそろ「ハルキスト」を名乗ってもよいだろうか。